たっきーの薬のはなし、キホンのキ

第9回 血中LDLコレステロールを減らすスタチンの作用

脂質異常症の患者さんに用いられる薬にスタチンがあります。
スタチンという薬があるわけではなくて、プラバスタチン・アトルバスタチン・ピタバスタチン・ロスバスタチンなどなど、○○スタチンな薬を、「スタチン」とよんでいます。

このスタチン、肝臓においてHMG-CoA還元酵素を競合的(=拮抗的)に阻害します。
HMG-CoA還元酵素ってなんだ??一言で答えると、コレステロールの生合成(体の中で合成すること)の律速酵素です。HMG-CoA還元酵素は律速酵素なので、この酵素が頑張れば肝臓でたくさんコレステロールができますし、この酵素がさぼればコレステロールの合成量が低下します。

さて、スタチンはHMG-CoA還元酵素の阻害をしますので、スタチンを飲むと肝臓でのコレステロールの合成が低下します。肝臓コレステロールが低下するわけです。そんな状態が引き続いてしまうと、コレステロールから作られる胆汁酸が少なくなってしまいます。胆汁酸は十二指腸で食物の消化吸収を手伝っているものなので、少なくなってしまうと困ります。

では、どうするか?血中にはコレステロールをたくさん含んだ「あいつ」がいっぱいいるんですよね。
肝臓は血中に存在するLDLを捕獲してしまおうと考えます!つまり、LDLに含まれるコレステロールを使って胆汁酸を作ろうとし始めるのです!教科書などには、「スタチンは、肝臓でLDL受容体の数を増やして、LDLの肝臓への取り込みを増大させることにより、血中LDLを減少させる」という記載がよくありますが、それは上記のようなことを言っているわけなんですね。

スタチンは①コレステロールの合成を肝臓において阻害します。 合成を阻害することで直接的にLDLを低下させるわけではなく、②肝臓でのLDL受容体の数を増やして、③血中LDLをたくさん取り込ませることで、④LDLを低下させるんですね。
ここ重要です。ほんとうに。

次回は、このすごいお薬スタチンにさらにせまります。

関連する国家試験を解いてみましょう

似たような問題が毎年のように出題されています。絶対に間違ってはいけないところですね。 確認して下さい!

  • コレステロール生合成に関与する肝臓の3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA (HMG-CoA)還元酵素遺伝子は、コレステロールによって発現が抑制される。(98回113問)

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    解答:○

  • 細胞内のコレステロールの量が増加すると、細胞表面にある低密度リポタンパク質(LDL)受容体の数が増加する。(98回113問)

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    解答:✕

  • (97回209問改変)
    プラバスタチンナトリウムは、生体内で3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA(HMG-CoA)からメバロン酸が生成する反応を触媒する酵素Aに作用する。

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    解答:○

  • プラバスタチンナトリウムは、□で囲んだ部分がHMG-CoAとの構造類似性が高いため、酵素Aを競合阻害する。

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    解答:○

  • アトルバスタチンは、ヒドロキシメチルグルタリルCoA (HMG-CoA)還元酵素を活性化し、血清中の低比重リポタンパク質 (LDL)の活性を増大させる。(92回143問)

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    解答:×、アトルバスタチンは、HMG-CoA還元酵素を阻害し、血中LDLを低下させる。

  • フルバスタチンナトリウムは、ヒドロキシメチルグルタリルCoA (HMG-CoA)還元酵素を阻害し、血清中の低比重リポタンパク (LDL)を低下させる。(91回140問)

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    解答:○

  • シンバスタチンは、肝細胞中のコレステロールを減少させる結果、低比重リポタンパク質 (LDL)受容体数を増加させる。(94回145問)

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    解答:○

  • アトルバスタチンは、肝細胞膜の低比重リポタンパク質(LDL)受容体数を減少させる。(93回145問)

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    解答:×

  • フルバスタチンは、肝細胞中のコレステロール量を低下させ、低比重リポタンパク質(LDL)受容体を減少させる。(96回146問)

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    解答:×

  • アトルバスタチンは、ヒドロキシメチルグルタリルCoA (HMG-CoA)還元酵素を阻害し、肝細胞表面のLDL受容体発現を増加させる。(95回146問)

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    解答:○

※2015年4月21日 一部問題訂正しました(93回145問)

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