たっきーの薬のはなし、キホンのキ

第8回 悪玉コレステロールと善玉コレステロールって?②

前回は、LDLとHDLの大まかな役割について説明しました。
今回は、もう少し詳しく、コレステロールが過剰にあるときに、LDLとHDLがどのようにはたらくのか、どのように動くのかを説明します。
ここがわかると、なぜLDLの検査値が高い時に動脈硬化が進み、心筋梗塞などになりやすくなってしまうのか?が理解できます!さらに、スタチンの薬理がすんなり頭に入ります。がんばっていきましょう!

<コレステロールが過剰にある時の、LDLとHDLの挙動>
組織にコレステロールが多い場合、その多すぎる分のコレステロールを肝臓から胆汁酸という形で排出する必要があります。組織からコレステロールを引き抜くのはHDLの役割でした。
つまり、HDLが組織からコレステロールを引き抜いてきます。HDLはこの過剰分のコレステロールをLDLへ渡します。
コレステロールを渡されたLDLは肝臓に取り込まれてコレステロールを渡します。肝臓はコレステロールから胆汁酸を作り、小腸へ排出します。
これにて一件落着・・・?

過剰分のコレステロールが胆汁酸として排出されるのはとてもいいことですが、問題があります。
それは、LDLが肝臓へコレステロールを受け渡すのがゆっくりだということです。
過剰なコレステロールを含んだLDLが、肝臓へコレステロールを受け渡すまで時間がかかるので、その間、血中をうろうろして肝臓へ取り込まれるのを待っている状態になります。

このウロウロ待機中のLDLは、血液中の様々な刺激によって損傷されていきます。
あまりにも損傷がひどくなると、体の中のお掃除屋さんであるマクロファージがLDLを食べてしまいます。
マクロファージは損傷の激しいLDLをずっと食べ続けます・・・。
マクロファージにも寿命がありますので、いつかマクロファージは死に絶えます。
そのとき、食べていた損傷LDLの残骸をまき散らかしてしまうのです。主に血管の中にまき散らかします。
まき散らかされたごみは固まり(アテローム)、動脈硬化の原因となっていくのです・・・。

つまり、コレステロールが多いと、コレステロール自身が悪さをするのではなく、コレステロールを含んだLDLを食べたマクロファージの残骸が悪さをするのです!(長い・・・)
ということで、マクロファージに食べられることで動脈硬化を促進させるLDLを悪玉コレステロール、組織からコレステロールを引き抜いてくるHDLを善玉コレステロールと呼んでいます。

ただし、LDLが悪玉コレステロールとよばれているからといって、LDLが全面的に悪いわけではありません。
肝臓がLDLをはやく取り込まないのも悪いわけで・・・。また、LDLがまったくなくなってしまうと、コレステロールのやり取りができなくなってしまいます。
LDLは一方的に悪いものなんだ!と決めつけるのではなく、体の中では必要なものでもあるということも知っておくことが大切です。

関連する国家試験を解いてみましょう

  • 高LDLコレステロール血症は冠動脈疾患の危険因子とはならない。(97回57問改変)

    答えを見る

    解答:×、高LDLコレステロール血症では血中LDLが多く存在し、血液中の様々な刺激によって損傷されます。その損傷されたLDLはマクロファージに食べられて、最終的には動脈硬化を進めます。動脈硬化が進むと、冠動脈疾患のリスクになります。

  • 血液生化学的検査において、低比重リポタンパク-コレステロール (LDL-C)の低値は、動脈硬化症の危険因子である。(91回181問改変)

    答えを見る

    解答:×、LDLコレステロールが高い場合、動脈硬化症の危険因子となる。

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