たっきーの薬のはなし、キホンのキ

第2回 血液中に存在する脂質とは? ①中性脂肪:化学物質としての特徴

前回は、脂質異常症の定義やなぜ治療をしなければならないのか?といったことをお話しました。
脂質異常症だからといって、それ自体は自覚症状もないですし、いますぐどうにかなるということでもありません。
しかし将来、心筋梗塞や狭心症といった大きな病気になる可能性が高まるので、未然に予防してあげましょう!ということで治療をしなければならない病気なんですね!

今回は「脂質」についてです。脂質異常症は、血液中の脂質の量の異常のことです。
では血液の中にはどんな脂質があるのでしょうか?

大きく分けて以下の2つが挙げられます。
①中性脂肪
②コレステロール

今回は①中性脂肪のお話です。

①中性脂肪
体の中には、体を動かすエネルギーを貯蓄するために脂肪酸という物質が存在しています。これは脂肪「酸」と名前の通り、酸性です。この脂肪酸がちょっと変形して、酸性ではなく中性になったものが「中性脂肪」です。モノグリセリド、ジグリセリドやトリグリセリドといったものがあります。
臨床的には、「中性脂肪」と言えば、「トリグリセリド」のことを言っています。中性脂肪、トリグリセリド、トリグリセライド、トリアシルグリセロール、Triglyceride、TG、Triacylglycerolなど言い方・書き方はたくさんありますが、臨床的にはすべて同じものと思ってくださいね。
化学的に厳密に言うと違うんですけどね・・・ブツクサブツクサ・・・。だって、モノグリセリドとかジグリセリドとかも中性脂肪だもん・・・ブツクサブツクサ・・・。しかし、実際問題、血液中にはモノグリセリドとかジグリセリドはほとんど存在しないので、「血液中の中性脂肪」と言った時にはトリグリセリドでいいのです!
もう一つ、よく混同されてしまいますので、先に言っておきます。栄養学とかで「脂肪」という場合には、多くの場合、このトリグリセリドのことを言っています。そもそも脂肪という化学物質は存在しません。脂肪酸なら当然ありますけど。食事で「脂肪が多い」と普段言っているものは、「トリグリセリドが多い」ということでもあるわけです。

薬剤師国家試験では、あいまいな語句の使用はできませんので、「中性脂肪」という言い方はせずに、「トリグリセリド」という記述がされています。テレビなんかでは「中性脂肪」と言うことが多いですね!

トリグリセリドは、言葉上、「トリ」と「グリセリド」に分けられます。
トリは「3」を意味していますし、「グリセリド」はグリセリンがあるよ、ということを意味しています。
では、3つのグリセリン?いいえ違います。3つの脂肪酸が1つのグリセリンにくっついているのが、トリグリセリドなんです。脂肪酸といえば、β酸化でATPをたくさん作ることが出来る物質ですよね。それが3つもくっついている構造なんです。とても大きいエネルギーをもっている物質といえますね。

それともう一つ、構造的に非常に重要なのが、水に溶けにくいということです。構造をみてみると、炭素が非常に多い構造で水に溶けにくいんですね。つまり、血液中のような水がベースになっている溶液では、それ単独では存在しにくいということを意味しています。これについては、第6回で詳しくお話をしたいと思います。


次回は、トリグリセリドがどこからきて、どこへいくのか。
トリグリセリドの合成と分解について、概略をお伝えします。

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