たっきーの薬のはなし、キホンのキ

第11回 日本で使われているスタチン:それぞれみんな違うんです。②

スタチンはすべて、HMG-CoA還元酵素を競合的(=拮抗的)に阻害することによって肝臓コレステロールを低下させて、さらに血中LDLを低下させる作用をもっています。
わが国では、6種のスタチンが販売されていますが、それぞれ微妙に違うポイントがあるんでしたね。

前回は、一つ目のポイント「薬効の強さ」についてお伝えしました。開発が古い3剤は、効き方が比較的マイルドなためスタンダードスタチンとよばれることがあり、その後に販売された開発が比較的新しいものは、効き方が強いため、ストロングスタチンとよばれるということでした。

今回はもう一つのスタチンの違いである②薬物動態の違いについてお伝えします。
つまり、体内からの消失過程が異なっていたり、代謝酵素が違ったりということです。

体内からの薬物の消失過程は、主に肝臓と腎臓の2つの経路があります。肝臓からの消失では代謝不活性化・胆汁排泄が関与しています。また、腎臓からの消失過程では尿排泄が関与しています。

<腎臓消失型>
プラバスタチンは、主に腎臓から消失します。ですので、薬物相互作用を考えるとき、肝臓での代謝酵素関係の相互作用はほとんどないと考えられます。

<肝臓消失型>
その他のスタチンは、肝臓より消失されます。
ピタバスタチンは肝臓でほとんど代謝されずに、胆汁排泄されます。つまり、ピタバスタチンもまた、プラバスタチンと同様に肝臓での代謝酵素の相互作用をおこしにくいスタチンと言えます。
シンバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチンは主にCYP3A4によって、フルバスタチンは主にCYP2C9によって代謝されることがわかっています。ですので、これらの代謝酵素を介した薬物相互作用がおこりうることを覚えておく必要があります。ただそのうち、ロスバスタチンは酵素による消失が弱く代謝酵素を介した薬物相互作用は起こりにくいとされています。

1.スタンダードスタチン…20%程度、LDLコレステロールを低下
 プラバスタチン(メバロチン®)   腎排泄
 シンバスタチン(リポバス®)    肝代謝(主にCYP3A4)
 フルバスタチン(ローコール®)   肝代謝(主にCYP2c9)
2.ストロングスタチン…30~50%程度、LDLコレステロールを低下
 アトルバスタチン(リビトール®)  肝代謝(主にCYP3A4)
 ビタバスタチン(リバロ®)     肝代謝(主にCYP3A4)
 ロスバスタチン(フレストール®)  肝排泄(胆汁排泄、代謝されない)

今回は、それぞれのスタチンの薬物の体内消失という点から、スタチンの違いについて示しました。
すべて覚えておくのはしんどいかもしれませんが、プラバスタチンは水溶性なので腎臓排泄、ピタバスタチンはほとんど代謝を受けず胆汁排泄ということは心に留めておきましょう。
つまり、この2つのスタチンは薬物相互作用を起こしにくいスタチンなので、比較的使いやすいとされています。

関連する国家試験を解いてみましょう

  • プラバスタチンおよびロスバスタチンは、シトクロムP450による代謝を受けにくいことから、薬物相互作用が少ないとされている。(97回問208改変)

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    解答:○

  • プラバスタチンは、胆管側膜に存在するMRP2 (Multidrug resistance-associated protein 2)により胆汁中に排泄される。(95回158問改変)

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    解答:○、肝実質細胞に取り込まれたプラバスタチンは、MRP2によりATPの加水分解を伴って、毛細胆管へ分泌される。

  • ピタバスタチンはプロドラッグであり、肝臓で加水分解を受けて活性体となる。(97回208問改変)

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    解答:✕、ピタバスタチンはそれ自体が活性体である。プロドラッグ型のスタチンは、シンバスタチンのみである。

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