たっきーの薬のはなし、キホンのキ

第1回 脂質異常症:脂質が異常で、なぜ治療?

「脂質異常症」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
実はこの言葉、2007年に日本動脈硬化学会が使い始めた言葉です。 それ以前は、「高脂血症」などと呼ばれていました。 いずれにしても、「血液中の脂質の量が異常ですよ~」という病気です。 通常の人よりも、脂質の量が多かったり、少なかったりしているわけですね。 脂質の量が異常になっている脂質異常症。 まずは病気の定義をしっかり押さえましょう。

脂質異常症になったからといって、頭が痛くなったり、吐き気がしたりといった、目立った自覚症状はありません。 なので、血液検査をして血液中の脂質の量を測定して、脂質異常症と診断されるわけです。 逆に言うと、目立った自覚症状がないわけですから、脂質異常症だからといって、いますぐなにかに困る!といったことはないわけです。 では、なぜ治療をしなければならないのでしょうか?

実は、脂質異常症をほっておくと、「動脈硬化」がすすむんです。 動脈硬化とは、動脈血管が老化して硬くなり、さらに、血管の内側に脂質の汚れがこびりついてしまい、血液の流れ(血流)が悪くなる状態のことです。最終的には血液が詰まってしまうようなことも起こるのです!! つまり、動脈硬化がすすむと、狭心症や心筋梗塞といった命にかかわる大病をおこしやすくなってしまいます! それならば、未然に脂質異常を修正して動脈硬化がすすむのを抑えてあげよう、というのが脂質異常症の治療目的なのです。


この脂質異常症、続発性のものと原発性のものがあります。続発性とは、他の病気が原因で、ついでに脂質異常症にもなってしまっているような状態を言います。原発性とはそれ以外の状態です。

続発性の原因としては、糖尿病や甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、クッシング症候群、ステロイド投与などが挙げられます。この場合は、まずその原因疾患の治療を行います。 原因疾患の治療をすることによって、脂質異常症も改善することが期待できるからです。

原発性の場合には、食事を含めた生活習慣の改善を行った上で、まだ脂質の量が異常状態ならば薬物治療が開始されます。続発性の場合で、原因疾患を治療してもまだ脂質異常症が残る時にも、同様に生活習慣の改善や薬物治療が行われます。

ところで先程から「脂質」という言葉が沢山出てきていますが、そもそもこの「脂質」、具体的には一体どんな物質のことを指しているのでしょうか?

次回は、「血液中に存在する脂質とは?」脂質の種類についてお話します。

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